『スリー・ビルボード』の監督と伝えたかった作品のテーマ

アカデミー賞短編映画賞を受賞したこともあるマーティン・マクドナーが監督を務めた『スリー・ビルボード』ですが、アカデミー賞で作品賞など7つノミネートされたことで評判になりました。

しかし、実は差別的な映画だと批判を受けてもいました。でもそこにはマーティン・マクドナー監督が込めた意味があったのです。

映画『スリー・ビルボード』の監督マーティン・マクドナーとは

1970年3月26日生まれのイギリス人。マーティン・マクドナーの両親はアイルランド人でロンドンに移民としてやってきました。そこで彼は産まれるわけですが、両親は結局アイルランドに戻っていまいます。

しかしマーティン・マクドナーと兄はロンドンに残り映画の勉強を始めました。マーティン・マクドナーはその後たくさんの戯曲を書き、注目されます。その戯曲は両親の背景や子供の頃に経験した「アイルランド」をテーマにした作品になっています。アイルランドを風刺的に描いた戯曲で、この頃から風刺、ブラックコメディーというのが彼の作風となっています。

長編映画監督として注目を集めた「セブンサイコパス」では非常に暴力的な映画を作っています。マーティン・マクドナー監督は北野武監督が大好きでこの「セブンサイコパス」は北野監督の作品に影響されていると言っています。実際「セブンサイコパス」の中で「その男、凶暴につき」が上映されるシーンがあります。

映画『スリー・ビルボード』に込めたマーティン・マクドナー監督の思い

『スリー・ビルボード』はアメリカのミズリー州を舞台に描かれている作品ですが、実は彼の今までの作品のようにアイルランドが所々に散りばめられています。
まず映画の冒頭にはアイルランド民謡が流れます。そして主人公の名前ミルドレッド:ヘイズですが、ヘイズはアイリッシュ系の名字です。アイルランドはカトリックの人が多いですが、『スリー・ビルボード』の中にもカトリックに神父が出てきます。

このように所々にアイルランドの要素を入れながら『スリー・ビルボード』は製作されていました。そしてアイルランドと同じように彼の作風である暴力的要素が多数含まれています。

特にサム・ロックウェル演じるディクソンは差別主義でとても暴力的な男性です。これが批判される的にもなったのですが、実はこのディクソンには秘密があるのです。映画では直接的に描かれてはいませんが、本当はディクソンは「ゲイ」です。彼はヘッドホンでアバの音楽を聞いています。ヘッドホンで聞いているのは誰にも聞いている曲を知られないためです。

ミズリーの田舎町ではゲイは差別の対象になってしまうからです。その差別から自分自身を守るために、ディクソンはあえて差別的な行動をとったり暴力的になってゲイということを隠していたのです。そんなディクソンは署長の手紙によって生まれ変わります。

主人公のミルドレッドも差別していたジェームズに言われた言葉で生まれ変わります。
これらのシーンでマーティン・マクドナー監督は「許し」ということを描いていたのでした。

映画のうわべだけを見てしまうと、一見暴力的な映画であっても、奥を探ればそこには監督によって込められた思いやテーマがあります。『スリー・ビルボード』の場合はそれが「許し」や「人の本当の姿」というものだったのです。
映画が面白いのは裏に込められたテーマや、見た目では分からない奥深い思いなどに触れたときの感動があるからかもしれません。『スリー・ビルボード』はそこに触れることができる作品の1つです。

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